社会の急激な変化が進むなか、予測不可能な時代を子ども達が自立的に生きられるようにと、学校教育に多くのことが期待されるようになりました。それに比例するように教員の過酷な勤務実態は看過できないものになってきており、文部科学省も教員の働き方改革を推進しています。教員の働き方改革が求められるようになった背景や、効果が期待される施策等について見ていきます。
1.教員の働き方改革が求められるようになった背景

出所)文部科学省「OECD 国際教員指導環境調査(TALIS)2018報告書Vol.2のポイント」
こうした教員の現状から懸念される影響として、教員の心身の健康面への影響や、授業準備に十分な時間を充てられずに教育の質を担保できなくなること、教員志望者が減り人材確保ができなくなることなどが考えられます。実際、令和4年度の公立学校教員採用試験の採用倍率が3.7倍、特に小学校は2.5倍と4年連続で過去最低を記録しました。団塊の世代が大量に定年退職を迎えたなど要因は様々ですが、やはり長時間労働などの過酷な労働環境が大きな影響を与えているといえます。
2.教員の働き方改革の実施方針
こうした状況を受けて文部科学省は、平成28年4月に「次世代の学校指導体制にふさわしい教職員の在り方と業務改善のためのタスクフォース」を設置し、検討の結果として「学校現場における業務の適正化に向けて」で次の4つの方針を示しました。学校現場の業務改善の推進と次世代の学校指導体制の強化は両輪で一体的に推進していくべきものだという考えが示されました。
- 教員の担うべき業務に専念できる環境を確保する
- 教員の部活動における負担を大胆に軽減する
- 長時間労働という働き方を見直す
- 国・教育委員会の支援体制を強化する
具体的な勤務時間外労働のガイドラインとして1か月45時間以内、1年間で360時間以内と定められました。
さらに、その実現に向けて中央教育審議会答申では、これまで学校・教師が担ってきた代表的な業務を次の3つに分類しました。

出所)文部科学書「(答申)新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について」 (中央教育審議会)
つまり、事務的な業務や部活動など、教員の手から放せるものは手放し、教員が担うべき業務に集中するようにリソースを活用するべきという要望が示されています。
3.教員の働き方改革の進捗状況
しかし長時間労働する教師は依然として多く、自治体・学校間で取り組み状況に差が見られ、取り組みを加速させる必要があることから、文部科学省は令和5年2月に補足を通達。対応が進んでいない教育委員会名を公表することもありえると警告しています。
このように自治体や学校によってはなかなか進まない実態もありますが、一方で積極的にICTの活用や外部人材の登用などに取り組み、成果を挙げている学校も数多くあります。
具体的に何をすればいいのかわからないという場合は、まず事例に触れることと、導入することでどの程度の効率化が見込めるのかを把握し、大きな時間削減が見込まれるものから優先的に取り組むことが効果的です。
4.教員の働き方改革の事例と効果が見られた取り組み
全国の学校における働き方改革の事例は、文部科学省が事例集としてまとめ、公表しています。また、自校の取り組み状況を把握しつつさらなる検討や振り返りに活用できる「働き方改革チェックシート」も公表されています。
「全国の学校における働き方改革事例集」はこちらから(「働き方改革チェックシート」付き)
この265ページにわたる事例集からも、働き方改革には業務のDX化と外部人材の活用が欠かせないことがわかります。「採点業務の外部サポート・分担」による年間108時間の削減など、学習評価や学習指導の分野でかなりの時間削減につながっている事例が多く共有されています。
ちりも積もれば年間で非常に多くの時間削減を実現することができ、その分を授業準備や自己研鑽に充てることも可能になるはずです。
ライター・編集 中原 絵里子

