一人一台端末と高速大容量通信ネットワークを整備し、学校教育にICTを活用するGIGAスクール構想。学習へのICT活用は急速に進んでいますが、実はかなり以前から実現に向けて実証研究が行われていました。文部科学省が2011年から推進してきた「学びのイノベーション事業」は、新しい時代を生きる子どもたちの「生きる力」を育むためにICTによる新しい学びを創造するための事業。その実証研究により、ICT活用は「一斉学習」「個別学習」「協働学習」それぞれの学習場面で効果が見られることがわかっています。以下、詳しく説明していきます。
1.「一斉学習」の定義と、活用シーンや効果について
一斉学習とは、日本の学校教育における最も一般的な学習形態で、一人の教師が多数の児童や生徒に対して授業を行うことです。「一斉授業」ともいいます。
「一斉学習」での活用シーンと効果電子黒板や子どもたちの情報端末に画像や音声、動画などを表示し、それを必要に応じて拡大したり書き込んだりすることで、視覚的にわかりやすく伝えることができます。
また、作業方法や実演の映像を見せることでより関心や理解を深めることが可能になります。例えば跳び箱の跳び方を説明する際、ポイントを口で説明するだけではイメージしにくくても、動画を流したり複数の人が跳ぶ瞬間の画像を重ねたりすることで、踏み切りのポイントや手をつくタイミングなどがより伝わりやすくなり、何を練習すればよいのか理解しやすくなります。
2.「個別学習」の定義と、活用シーンや効果について
個別学習とは、子供たち一人ひとりの能力や特性に応じた学びのこと。習熟度に応じた学習のほか、調査活動、表現・制作、情報端末の持ち帰りによる家庭学習などが対象となります。
情報端末を用いることで一人ひとりの理解度・習熟度、ペースに合わせた進度や難易度の学習に取り組むことができます。
また、外国語の発音や朗読、書写、運動や演奏の様子を記録して客観的に見直したり、他の人と比較したりすることで、技能を習得するために役立てることができます。
さらに、専用ソフトや動画コンテンツの活用などにより、実際に行うのは難しい実験や試行が可能になります。例えば空間図形を画面上で回転させることで全体のイメージがつかめたり、インゲン豆の生育の様子を高速再生で確認したりすることなどができます。
3.「協働学習」の定義と、活用シーンや効果について
協働学習とは、子どもたち同士が教え合い、学び合う協働的な学びのこと。発表や話し合い、複数の意見整理、協働制作のほか、遠隔地や海外の学校などとの交流授業などが対象となります。
学習課題に対して自分の意見を整理してまとめ、周りに伝え合うなど、子どもたち同士が教え合い、学び合うことで思考力・判断力・表現力を育んだり、多様な意見に触れて新たな気づきを得たりすることができます。
新学習指導要領でも重視されているアクティブ・ラーニングのポイントは「何を学ぶか」よりも「どう学ぶか」といわれていますが、協働学習により自然と対話的・主体的に学ぶ姿勢を身につけることが期待できます。
4.学習へのICT活用における課題
文部科学省の公表資料でも、実証校での各教科等におけるICTの活用例と効果として以下のような点が挙げられています。
- 画像や動画を活用したわかりやすい授業により、興味・関心を高め、学習意欲が向上。
- 児童生徒の学習の習熟度に応じたデジタル教材を活用し、知識・理解の定着が図られた。
- 電子黒板等を用いて発表・話合いを行うことにより、思考力や表現力が向上。
- また実証実験後のアンケート調査でも、生徒・教員ともに「楽しく学習できてわかりやすい」など、肯定的で高い評価が見られました。
- デジタル教科書・教材等を提示するだけでなく、観察・実験等の体験的な学習が必要です。
- ICTを活用して発音や対話の方法を学習するだけでなく、対面でのコミュニケーション活動を合わせて行うことが必要です。
このように様々な効果が見られるICT活用ですが、現在の課題として「デジタル教材の充実」「体系的な指導法の確立」「無線LANや機器などの環境整備の充実」「健康面への配慮(特に視力や姿勢)」「情報セキュリティへの対応」などが挙げられています。
また、デジタルだけで完結させるのではなく、授業での観察や実験などの体験的な学習や、対面でのコミュニケーション活動を合わせて行うことが必要です。従来の対面での授業の価値にICTを組み合わせ、それぞれの強みや特長を活かすことでより学びが深まっていくといえるでしょう。Society 5.0 時代に生きる子どもたち一人ひとりに個別最適化され、創造性を育む教育 ICT 環境の実現に向けて、学習環境がますますアップデートされていくことが期待されます。

ライター・編集 中原 絵里子

